2025年6月13日金曜日

【三度目の正直 鳥海山登頂備忘録】 25'6/7-8

自分の中で何故か登りたくてたまらん鳥海山。
秋田・山形というお米が美味しい愛しい地にポツンと海沿いにそびえ立つ美しい姿と鳥海ブルーと表現される青のコントラストに魅了されているのかもしれません。
初回は23年9月に挑戦するも悪天候で断念し2回目は24年3月に挑戦するも装備不足で断念し今回が三度目の正直の鳥海山。
6月の梅雨入り前の残雪期に登ろうと考え飛行機だけ安いタイミングで抑えてあとは天気は運任せ。以前の様に平日有給とかがないので土曜の仕事後に秋田入りして日曜夜には京都に戻らないといけないので嫌でも弾丸になってしまいます。
往路は伊丹19時15分発のNH1655便で復路は秋田18時15分発のNH1656便。



6月7日 土曜日
なんとか仕事を15時までに終わらせ少し休憩してから伊丹空港へ向かいますが毎度の事ながら空港までがしんどくてストレス。大量の荷物を抱えて電車とモノレールを乗り継いで行くのが辛いところ。
今回の鳥海山は6月の残雪期であり山行記とかを調べるとアイゼンまでいらないけどチェーンスパイクは必要という記事が多い。でも人によってはピッケルも持参したりと装備はまちまち。弾丸登山であり夜中に登って朝には降りる予定でしたから熊との遭遇もあり得るか。可能性が低いとは言え、あり得るのも事実であり熊よけスプレーを購入していましたが熊と格闘する事もあるかもと念のためにピッケルも持参する事にします。服装に関しても短パンでトレラン姿で登っている記事もあれば真冬の装備で登っている記事もあったりと全てが読めん。
そうなってくると必然的にあれもこれもと持っていくものが増えてしまうという悪循環。どちらにしても機内にピッケルやストックは持ち込めないのでグレゴリーのアルパカ60に装備品をぶち込んで手荷物に預けるわけですからとりあえずあらゆる事を想定して詰め込んで準備完了。
NH1655便はQちゃんですので残念な沖留めスタート。搭乗口からのバスに乗り込みますがエコボンが翼を休めていました。定刻に離陸しトワイライトタイムに北上を続けますが眼下に琵琶湖の瀬田付近が見えましたが雲が多い。現地秋田山形の天気は果たして。



満席のNH1655便は定刻に秋田空港に着陸しましたが手荷物を受け取ったりしていたら21時。レンタ会社はとっくに閉店しています。大昔ならレンタを借りれず断念という状況ですが今はタイムスカーシェアがあります。24時間いつでもレンタ可能で本当に便利。



山の中の空港なので空港を出たら真っ暗で出だしから心細くなります。レンタカーの並びも既に閉店しており真っ暗ですがタイムスカーの所だけが中途半端に電灯が灯っておりなんとも言えないホラー感が。この時間から借りる人は他に誰もおらずアプリで解錠して今回の相棒のヤリスに乗り込みとりあえず鉾立の登山口を目指します。
鳥海山は秋田と山形の県境にあるだけあり秋田空港からも山形空港からも遠く登るチャンスが余計に少なくなります。秋田空港からは90km、約1時間半の道のりです。0時から登るとしても時間に余裕ありありなので途中にファミレスとかがあればそこで夕食と思ったけど走れど走れど真っ暗闇が続いて心細くなり都会の灯りが既に恋しい。テンションがどんどん下がっていきますがとにかくカロリーを摂らなければと思うも店がない。途中から日本海東北道の無料区間に乗りましたが仁賀保IC付近は街の灯りもあり「すき家」の看板も見えたような。でもこの先の象潟とかにも店があるかもと通過してしまったが結果として店がない。ICを途中で降りて牛丼を食っておけば良かったと後悔しましたが登山口と反対側の象潟駅方面に戻りコンビニ飯となりました。



フードロス削減でコンビニでも賞味期限間近の商品を値引きして販売するようになっており貧乏根性も相まって全て値引きされた商品ばかりを購入してしまいます。愛しい秋田山形と冒頭で書いていたけどやはり東北の夜は寒くて暗過ぎる。ぼっちコンビニ飯も相まってますますホームシックになってしまいこんな精神状態で登山が出来るのかと弱気になってきた。そう思いながらも食べ終わったら登山口に移動します。
冬季閉鎖されている鉾立への鳥海ブルーラインも5月からは通行可能なので春から鉾立からの登頂が可能になります。真っ暗な中をぐんぐん登り鉾立山荘・稲倉山荘まで象潟から30分で到着しましたが多くの車が停まっています。が、人の気配がなく山荘関連の車なのでしょうか。一般駐車場ではなく登山者用の駐車場に移動しますがここにも数台停まっているけど人の気配がない。外は真っ暗ですが遠くに仁賀保の夜景もぼんやり見えているのでそこまでガスってなさそう。が、車が揺れるくらいの風が吹き荒れていて外に出たら超寒い。とてもじゃないですがこんな暴風の夜道を登る勇気はなく今回も登頂は無理かもしれないとますます弱気になってしまった。レンタの返却が17時であり鉾立から空港まで2時間と考えたら15時には下山していなければなりません。往復12時間と考えたら3時には登頂を開始しなければならないと少ない脳味噌で計算し続けましたがどちらにしれもこんな状況では登るに登れんので車内で仮眠をとる事に。ヤリスは後部座席が超狭くて同じ値段ならもう少し広いアクアにしておけば良かったと後悔。後部座席でダンゴ虫のように丸くなって風の音と振動に悩まされながらもいつの間にか寝落ち。


6月8日 日曜日



3時から登頂するつもりでしたがアラームを忘れて寝落ちしたので気付いたら空が明るい。時刻は04時30分を回っています。しまったと思い辺りを見渡すと車が増えて登山口に向かう人達も見えます。風も少し収まっており登る人がいるのが何よりも心強い。自分も急ぎ身支度を整えて5時頃に登頂を開始します。タイムリミットまで10時間なのでとりあえず行けるところまで行ってみよ。



秋田県にゆかりのあるTDKの東雲荘を越え舗装された登山道を進みますがしばらくしてすぐに雪渓が出現。



距離が短いのでここはチェーンスパイクを付けずに恐る恐る渡り進みますがしばらく進むとすぐに登山道が雪で覆われここからチェーンスパイクを装着。



ガスってきて視界も悪くなりどう進んだら良いかわからなくなりますが親切に目印も作られておりポールを頼りに進みますが次のポールが見当たらずに最短で進めないのが精神的な重圧となり無駄な行ったり来たりも相まって体力も消耗されていきます。



そんな事を繰り返して進みますがこの先が再び登山道かと思って進んだらどう考えても小川でありとても進めず逆戻りしてまた彷徨ったり。




途中まで一緒にいた人も見えなくなり単独行となり彷徨い続けてようやくポールを発見してその先に真の登山道を見つけては登り続けます。




この繰り返しで時間と体力を浪費し続け精神的にも参ってきた。
五里霧中とはまさにこの事かと自分の人生と相通じるものを感じながらとぼとぼと進みますが御浜(おはま)小屋に到着して一区切り。



ガスっていなかったら右手に鳥海湖が見えるはずですが見えません。見えたとしてもまだ雪解け前であり7月か8月の晴れた日にまたいつか。先へ進み外輪山コースに入ってくると再び上り下りの雪渓が立ちはだかりますがチェーンスパイクを付けるのがめんどくなりなしでのんびり進みます。トラロープで道標が作られていますので前半のような迷子にはなりません。途中でairpodを耳にはめて下山してくるお兄さんとすれ違いまいたが彼は夜中に登頂して影鳥海山をみようとしたのだとか。よくあんな暴風で真っ暗な中を登りましたねと言ったら道に迷いまくったらしい。それでも単独で夜中に登頂するなんて度胸があり過ぎであり自分には真似できんと思った。



さて、登頂開始から2時間半、07時30分頃に外輪山と千蛇谷との分岐点付近までやってきました。ここで単独行の秋田美人と出会いましたがどう進むべきかお尋ねしてみます。何度も来られている玄人さんのようで外輪系は風がきつくて危ないかもしれないので風の影響を受けにくい谷から登った方が良いのではと教えてくださった。谷側からだと直登できますよと。直登という言葉が気になったけど午前中には登頂出来そうであり最後まで行ってみる事にします。




右に進めば外輪系、左に進めば千蛇谷でありアドバイス通り左に進んでいきますが秋田美人は外輪系に消えて行ってしまいすぐにまた心細い。
やはり経験者のいるいないでは安心感が全然違う。やはり初回で単独行は無謀です。




分岐から谷に下ると大雪渓が広がっています。その雪渓をチェーンスパイクを装着して正面に見えるゴールの新山方面に向かっていきます。徐々にガスも晴れてきて青空も見えるようになってきました。直登とは言われたけど最後、あの急な所を登るんですか。



これ、途中で携帯とか落としたら滑り落ちてどこまで取りに行かないとあかんのやろかという恐怖もありましたが
記念撮影をしながらじりじりと登って鳥海山大物忌神社(ちょうかいざんおおものいみじんじゃ)山頂本社に到達。ここまできたらもうあと少し。




ここからは溶岩岩を四足歩行でよじ登っていきますがヘルメットを被っている人は自分以外おらず。慣れていてもつるんとこけたら岩に頭を打ち付けておしまいですから自分は次回以降もヘルメットで登頂します。ていうか疲労時にふらついてバランスはいつでも崩しうる訳であり個人的に山行時はほぼほぼヘルメット。




残雪が多かったらこの隙間の夏道は通れないようですが山頂にはほとんど雪がなく隙間の夏道を抜けた先をもう一登りよじ登ったら新山山頂。
鉾立登山口から登頂開始約4時間。9時頃に登頂完了となりました。三度目の正直で叶った鳥海山登頂でしたが薄雲も多く鳥海ブルーには巡り会えなかったので再履修は決定です。



分岐点で会った秋田美人も山頂に到着されしばし歓談し秋田美人は谷方面、自分は外輪山系へと下山を開始して今回の鳥海山山行は終了となりました。のんびり下山しても13時には登山口に戻れそうであり帰りの飛行機までに温泉に入ってから帰れます。



山頂から外輪山へは上り下りがあるはずですが雪がまだ大量に残っており雪の上を通って外輪山方面へと進みます。



スノーブリッジを通って向かいの外輪山へ楽勝で向かえますがもしも途中で雪崩になったらどうなるのだろうかと思いながら渡ります。



振り返るとスノーブリッジの先に深山が見えます。名残惜しいですが帰りの予定を考えてさようなら。通過する外輪山は行者岳、伏拝(ふせおがみ)岳、文殊岳ですが100mくらい逆走したら七行山(しちこうさん)もありますので少しだけ逆走して七行山にも立ち寄り空いていたのでこちらでご飯休憩を取ります。



ここで広島から来られていたおじさんも昼食を摂られていましたが広島からの直行便がないので伊丹に1泊して伊丹から乗り継いで秋田まで来たそうな。今日も下山して秋田に1泊してから月曜に広島に向けて帰るらしい。京都から土曜の夜に飛行機で来て日曜の夜の飛行機で戻りますと言ったら「京都からの登山はそれが標準なのですか?」と聞かれたけどこんなアホな登り方をする人は少ないと思いますが果たして。
七行山でしばし休んだら行者岳、伏拝岳と外輪山の尾根伝いに谷側を見下ろしながら進みますがよく登ってきたもんです。




伏拝岳を越えた所に岩が突き出た地点がありそこからの外輪山系の眺めも良くここでも小休止。ちょうど広島のおじさんと同時に登られていた東京からの二人組の方もおられ綺麗ですねと談笑しながら暑くなったのでアウターを脱いで荷物整理。


と、もう後は下山するだけという油断があったのでしょう。ザックの中からモバイルバッテリー、ペツルのヘッドライト(5280円)、普段持ち歩いている化粧ポーチ、ザックカバー等などを入れていたパタゴニアのブラックホールキューブ6L(7260円)を岩の上からゴソっと音がして落としてしまった。岩場だし普通に拾おうと思ったけど消えており足元の穴に絶妙に吸い込まれたみたい。


中は暗くて深くて見えません。岩と岩が複雑に重なり合っての地形のようで底が見えず。
自分はあーあと早々に諦めていたら東京の方が取れるかもしれないと上半身を突っ込んで格闘してくれストックを使って持ち上げたけど惜しくも引き上げられず逆に明後日の方向に振り落としてしまいジエンドとなりました。ジエンドにはなったけど垢の他人の為にここまで一肌脱いでいただいた事に感謝しかありません。



感謝しかないけどやはり総額1万以上の損失と何より普段からの愛用品を一気に失ったダメージはでかい。愛してやまない鳥海山でしたがもう二度と来たくないなという思いも芽生えてしまった。せめてもの救いは携帯を落とさなかった事と車の鍵をボックスに入れておかなかって良かったという事。これで車の鍵を紛失していたら発狂もんです。




今回の登山はノートラブルだと思っていたけどやっぱりトラブルがありました。失意のもと下山を続けますがミヤマキンバイやハクサンイチゲが咲き始めており心の傷を少しばかり癒してくれました。




帰りも雪渓の登り返しを幾度と越えて進みましたがガスもなく視界も開けておりストレスなく下山していきます。秋田・山形県境地点からは鳥海ブルーと仁賀保の景色が見れ振り返ると山頂も顔を出した鳥海山を見送る事が出来ました。



5時頃から登り始めて約8時間。13時鉾立登山口に無事下山です。最悪12時間とみていましたが途中のアクシデントとかとかがあっても何とか8時間で済ますことが出来ましたので7月8月の雪がない状態ならもっと余裕で来れるはずです。



レンタの返却まで4時間ありますので道の駅象潟に立ち寄り象潟温泉のねむの丘で温泉に入り疲れと汗を洗い流します。空港には16時には到着して展望デッキでお昼寝タイムとなりましたが憎たらしいくらいの青空。折り返しNH1656便となるQちゃんがやってきたので保安検査場に向かい弾丸登山は終了です。



今日の夕方からナイトハイクをしたら綺麗だったんだろうなと思いながら機内から鳥海山を見送り帰京となりました。真の鳥海ブルーに会うためには通わなければなりません。誰か土日で秋田まで行ってくれる人がいたら御連絡ください。



今回も回りくどい山行記となりましたが最後までお付き合いいただきありがとうございました。



おしまい




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