2023年9月27日水曜日

【 槍ヶ岳登頂備忘録 その2最終回】 23'9/23-25

その1からのつづき


最低気温は氷点下のようでしたが凍える事もなく朝まで浅いけど眠れ、4時頃にアラージック大将の明け方の止まらないくしゃみで目覚めます。5時前には全館放送で朝食の案内があり食堂内に人が雪崩れ込みますがここもマシンと化したスタッフが淡々と席を案内し20分以内という早飯でモーニングは終了。ロビーでは御来光を見る為に登る人達でごった返していましたが我々は真っ暗な中を登って渋滞に巻き込まれるより時間をずらして登ろうと考えておりました。



日の出の時刻になりましたが太陽が昇る地点は厚い雲に覆われ隙間からちょろりと見える程度でしたが山頂と山頂までの崖には多くの登山者が溢れています。雲海が湖のように広がっていますが時の経過とともに滝のように流れ落ちクリアになってきました。6時から大喰岳(おおばみだけ)方面にウォーミングアップがてら散歩して別の角度から槍ヶ岳を眺めます。






山荘のテント場を越えて大喰岳方面に進みますが綺麗に槍の影が尾根に投影されいます。既に明け方に槍ヶ岳への登頂を終えた人々が同じ方向へ進んでいますがこのまま中岳、南岳と進んで超難所の長谷川ピーク方面に向かう人も。中岳経由で降りるかという案もありましたが上高地の門限を考えると現実的ではないので今回はパス。




振り返ると槍ヶ岳山荘と槍ヶ岳が目に入りますが本当に美しい光景です。他の登山者について行っていたらいつの間にか大喰岳の山頂を通過していた。皆さんまったくもってノーマークで先の中岳、南岳を目指しているみたい。そんな存在感の薄い大喰岳ですが山頂まで戻ってもちろん記念撮影。ちょうど我々が看板の前を邪魔しているタイミングでGoPro自撮り山ガールが空くのを待っていたので譲ります。敢えてはあはあ息を弾ませながら「はぁはぁ、大喰岳に到着しましたー」と自撮りしている姿にVlogの裏側を垣間見たような気がした。そんな可愛い山ガールと心の中でお別れして再び槍ヶ岳まで戻りますが渋滞も消えているのでいざ登頂。








基本的に上下線は分離されていますが下りの人と合流する地点も。すれ違ったおじさんからは今なら貸し切り状態ですよと励まされた。おっちゃんありがとうと心の中で言いながら素人さんかつ高所恐怖症なので敢えて下は見ず。目の前の鉄杭や岩を三点支持でコツコツと登るのみ。人生と同じでコツコツ進むしかないと思いながら一歩一歩を大切に大切にと唱えながら着実に進んでいけばゴールは見えるハズ。最後の垂直のハシゴ場は流石に緊張しまくりましたがこちらも一歩一歩確実にと唱えながら登りきります。





ハシゴを登り切ったら先着されていたおばちゃんが拍手でおめでとうと迎えてくれた。山頂には数人しかおられなかったのでゆっくりと過ごします。山荘方面を見ると笠ヶ岳、奥穂高連峰もはっきりと見えます。次に登ってきた人が来たら降りましょうかとなりましたがなかなか来られれず8時20分を回っており下山開始。




降りてきたけど時刻は9時。山荘は空いていてキッチン槍でコーヒー一杯500円也を注文。ドリップして淹れてくれるコーヒーが3000mの山小屋でこの値段と思えば良心的。大将は槍のクッキーも買われ槍ヶ岳を眺めながら登頂の余韻に浸りました。




さあ、あとは上高地の門限に間に合うように下山するだけです。正確には上高地の門限というよりも宝山荘の夕食に間に合うように下山。上高地から新穂高温泉の駐車場までの移動を考えると16時過ぎには到着しておきたいところですが下山開始が9時20分。本に記載されている時間通りだとタクシー乗り場のあるビジターセンターまで8時間弱もかかる。休憩とかを入れたらと思うとぞっとしますがまきで降りるしかないといういつものパターン。
上高地方面へひた降りますが振り返れば槍ヶ岳の威容が目に飛び込んでくる。上高地ルートで登ればずっとこの光景を見ながら延々と登る事になり体力的にもきつい。新穂高ルートにしろ上高地ルートにしろゴール前のこの急激な登りがたまらん。太陽を浴びて山頂直前の鉄ハシゴが光っていますがよくあんなところを登ったなと改めて思った。玄人さんからしたら大した事はないかもしれんけど帰宅してオトンに報告したら真顔で「死ぬで」と言われたけどまさにそう。




槍ヶ岳も小さくなりそろそろ見納め。そんな途中に播隆窟なる岩屋と記念碑が。なんでも初登攀した播隆という人が1834年にここに53日間籠って念仏を唱えたそうな。江戸時代に装備もままならぬ状態で登っている先人たちは正に偉大なり。そして水俣乗越まで来たらあとはほぼ平坦なピクニックコース。しかしこの平坦なピクニックコースが5時間以上続くというのが苦痛の極みでもありました。



これが槍ヶ岳と言われてもそうとしか思えない槍見を通り過ぎ槍沢ロッジのフィールドスコープから遠く離れた槍ヶ岳の山頂も見えました。ひでさん曰く「我々もここから見られていたかもしれませんね」と。



あとは退屈な上高地への道をひたすら進み横尾山荘の昼食休憩までほぼノンストップで歩き続けます。途中の沢の苔が綺麗でしたが基本的には熊笹の生い茂る道を延々と進み続ける感じ。登る距離と時間よりもそこまでにたどり着くまでのアクセスの困難さが余計に槍ヶ岳を遠い存在にしていると実感しました。




横尾を越え徳沢を越えたら明神橋。明神橋を越えたら一般観光客がうじゃうじゃいるゾーンに突入しゴールの河童橋まであと少しです。こぎれいな格好をしたカップルたちの間を縫って先を急ぎますがまいてまいて歩き続けて河童橋には16時過ぎに着く事が出来ました。




河童橋には既に影がかかっています。タクシーにさくっと乗って戻るだけでしたがタクシー待ちの行列が出来ており乗るまでに20分くらいのロスが生じてしまった。それでも鍋平の臨時駐車場まで13000円強で戻り宝山荘にも18時頃に到着する事が出来ました。夕食は18時からですが女将さんもお風呂入ってからでしょとおわかりになられていて18時30分からに御高配を賜り2日分の汗を温泉で流します。誰もが思っている事ですがやはり山小屋のトイレ水事情は厳しい。貴重な水ですから風呂も入れずトイレも臭く洗面台も3つしかなく水の出もちょろちょろ。ある程度の耐性がないと山小屋には宿泊できません。それを差し引いてもまたアルプスに登りたいと思わされる景色と空気がありました。
温泉と美味しい料理と綺麗な部屋で日常の便利さと清潔さに改めて感謝しつつ翌日に帰京。この日も晴でもう一山登って帰りますかという気分でしたが肉体崩壊状態であり真っすぐ帰宅となりました。


おしまい


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